{"product_id":"tengoku-no-kioku","title":"天国の記憶","description":"\u003cp\u003eあの日、真澄は花畑にいた。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e膝の高さに咲く白い花が、見渡す限り続いている。種類はわからない。マーガレットにも、雛菊にも見える。風が吹くと、花たちは少しだけ向きを変えた。空はうすい水色で、雲の境界がはっきりしない。誰もいない。鳥の声もしない。ただ、花だけがあった。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e「ここは、天国かな」\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e真澄は声に出してみた。誰にも聞こえないと知っていた。それでも、声を出してみたかった。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003eふと頭に重みを感じて、手をやると、帽子を被っていた。記憶にない帽子だった。表は半透明で、向こう側がうっすら透けている。指で軽くつまんで、目の前にかざすと、布越しに、花の影がぼんやりと立ち上がった。シースルーの裏側に、花柄の生地がもう一枚、隠されていた。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e「私が、ここに置いていったんだろうか」\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e真澄はそう思った。確かに記憶にはない。でも、ずっと持っていたものでもあった。それくらい、自分の頭に馴染んでいた。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e風がもう一度吹いた。花が一斉に揺れて、真澄の足元の地面が、ほんの少しだけ揺れた。気づくと、目の前にひとつ、扉のような輪郭が浮かんでいた。輪郭は薄くて、向こう側が透けて見えた。シースルーの帽子の生地と、よく似ていた。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e真澄は帽子をしっかりと被り直し、扉のほうへ歩いた。歩くたびに、足元の花が、静かに揺れた。\u003c\/p\u003e\u003cp\u003e帽子の内側で、花が静かに咲いていた。\u003c\/p\u003e","brand":"KABURU","offers":[{"title":"Default Title","offer_id":43670440345678,"sku":null,"price":6000.0,"currency_code":"JPY","in_stock":true}],"thumbnail_url":"\/\/cdn.shopify.com\/s\/files\/1\/0718\/3908\/8718\/files\/A7V02096_f5fae330-196d-4fb0-8581-306f11174967.jpg?v=1780317615","url":"https:\/\/kaburu.org\/products\/tengoku-no-kioku","provider":"KABURU","version":"1.0","type":"link"}