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天国の記憶
¥6,000 JPY
Product Story
あの日、真澄は花畑にいた。
膝の高さに咲く白い花が、見渡す限り続いている。種類はわからない。マーガレットにも、雛菊にも見える。風が吹くと、花たちは少しだけ向きを変えた。空はうすい水色で、雲の境界がはっきりしない。誰もいない。鳥の声もしない。ただ、花だけがあった。
「ここは、天国かな」
真澄は声に出してみた。誰にも聞こえないと知っていた。それでも、声を出してみたかった。
ふと頭に重みを感じて、手をやると、帽子を被っていた。記憶にない帽子だった。表は半透明で、向こう側がうっすら透けている。指で軽くつまんで、目の前にかざすと、布越しに、花の影がぼんやりと立ち上がった。シースルーの裏側に、花柄の生地がもう一枚、隠されていた。
「私が、ここに置いていったんだろうか」
真澄はそう思った。確かに記憶にはない。でも、ずっと持っていたものでもあった。それくらい、自分の頭に馴染んでいた。
風がもう一度吹いた。花が一斉に揺れて、真澄の足元の地面が、ほんの少しだけ揺れた。気づくと、目の前にひとつ、扉のような輪郭が浮かんでいた。輪郭は薄くて、向こう側が透けて見えた。シースルーの帽子の生地と、よく似ていた。
真澄は帽子をしっかりと被り直し、扉のほうへ歩いた。歩くたびに、足元の花が、静かに揺れた。
帽子の内側で、花が静かに咲いていた。
素材・仕様
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